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宮本ひかり個展 「今日の3分クッキングは、季節の野菜を使ったアッサリおひたし。今日は菜っ葉をサッと茹でますよ〜」みたいなノリだよね。サッ、パラッ、どうぞ!

会期2012年7月7日(土) - 29日(日)(閉廊日:火曜日)
時間月・木・金・土曜日は18:30 - 22:00、水・日曜日は15:00 - 22:00
会場22:00画廊
住所東京都小平市小川町1-776-18

<イベント情報>
7月7日(土) 17:00 - 22:00
オープニングパーティー「ちらし寿司の宇宙、いきなり団子のロマンス」

7月11日(水)
15:00から 畳替えイベント「畳の匂いでショートトリップ」
16:00から 流しそうめんイベント(齋藤朋久さんと武蔵野美術大学の学生さんご協力のもと開催)

7月29日(土) 17:00 - 22:00
クロージングパーティー「捨て身のニガウリ」

「定めないのと定まっていないのは違う」という言葉は、本展覧会に足を運んでくれた方が宮本作品に対して残した言葉である。その言葉通り、宮本ひかりの制作スタンスはかなり明瞭で「定めないこと」を前提として絵を描き進めていく。

「定めない」ことによって、特定のコンセプトやルール・ルーティーンワークに自らが縛られることを避けながら、同時に宮本の絵画は「宮本ひかり」という記号が貼られることを巧みにすり抜け、ある一つの絵が目の前にあるという事実だけを残す。その残されたものと対峙する我々は、唯一絵画に没入することだけを許されることになる。

作品のテーマは日常生活の中で気づいたことからピックアップされているが、それは宮本のフィルターを通した空間であり、モノの在り方である。その宮本の外界・外部の捉え方を通して、我々はある意味新しい空間やモノの見方を新たな選択肢として獲得する。

仕事の合間をぬっての制作のため、1日のうちで絵と向き合える時間は限られているが、その限られた短い時間を積み重ねることによって宮本の絵は完成へ向かう。ある一定のルールを積み重ねることに固執することなく、場合によってはそれまで描いてきた方法を捨て新たな方法によって、しかしながらそのキャンバスを捨てることなく上から絵具を乗せ、それまで描いてきたものも活かしながら。

本展示では、旧作と新作を織り交ぜて展示して頂きました。宮本の作品制作に対する変遷を垣間見ることができる貴重な機会となりました。

畳替えと流しそうめんイベント

宮本の絵は家の外側を常に意識させる。外側というのは家の外壁や外観という意味ではなく、家のまわりにある庭であったり、フェンスであったり、池であったりといったごくありふれたものだ。そういった外側と展示空間を繋ぐ装置として、青臭いニオイを放つ新しい畳と当画廊の敷地にある庭で流しそうめんをした。

「編むことの絵」を巡る対話

建築雑誌でライターをしている荒井隆大さんを交えて、宮本作品について宮本当人に質問をぶつけた。その時のやり取りを荒井さんがテキストにしてくれたので、最後に掲載させて頂きます。荒井さん、お忙しいところ、ありがとうございました。

宮本ひかり(出品作家)×河口遥(22:00画廊主宰)× 原田賢幸(美術家)×荒井隆大(編集者)

荒井(以下A)油彩ですけど、比較的絵具が薄い作品が多いですね。例えば水彩とか、他の絵具を使ったりしないのですか。
宮本(以下M)発色や勢いは大事にしています。
原田(以下H)油でなければ出せない発色や勢いがある、ということですか。
でも、別に薄く描こうとはしていないんですよ。何ていうのかな、薄さと厚さのリズム感や、描いているときの画面に置いてある絵具の反応によって置く絵具が変わっていくんです。躓く回数が少ないほど、絵具が薄いままの状態で進めていけるんですけど、悩んだり行き詰ったりする絵もあって、そうなると絵具が厚くなる。
それは、そのまま何度も絵具を重ねていくということですか。
そうですね。試行錯誤していく中で出てくるものを大事にしていて。それで自然と厚くなって、新しい、思っていなかった表情が出てくる。それは結構大事にして描いていますね。意識して薄くしているわけではない。絵具の発色が薄いほうが好きというのはあるかもしれない。透明・不透明のバランスも…
それは結構考えて?それとも結果的としてなるんですか。
過程の中で考える、という感じですね。最初、何となくイメージがあっても、思わぬことが起これば、それにまた反応したり、そういうものを全て取り込みながら完成に向かえればいいなと思っています。
その状態は、絵具が厚いと実現できない?
そんなこともないかな。1階にある絵のなかに、1度描いてから2年ほど置いて、再び加筆したものがあるんですけど、なにもない状態から描いたものよりは厚くなっている。それはそれで、自分にとっては新しいかな。
結果として、悩んだりプロセスが長いものは絵具が厚くなっていく、と。
そうですね、確かに。でも、かかった時間は意外に関係ない…半年かかっているんですけど(絵具が)薄いものもあるし、1ヶ月ぐらいしかかかっていないけど、厚くなっているものもある。日数の問題ではなくて、うまくいかない箇所が多いほど厚くなるんです。
宮本さんがどうやって描いているのか、がすごく気になるんですよ。
それはプロセスの話ですか?
制御しているように見えないから。部分を描くとき、他の部分も同時に描いていくのか、部分の集積としてこういう画面になるのか、どういう風に描いているのかな、と。
これは、帽子を編んだときの感覚を元に描いていて。ニット帽を編むとき、同じ目を延々と編んでいるような感覚になって、今どこを編んでいるのか全然わからなくなる。時間も平気で3、4時間経ってしまいますね。この感覚がベースになっているので、描くときもそんな感じ。最初にベースだけ作っておいて、全体を大きく「編んで」イメージ図を作った後に、さらに間を「編んで」いく。「編む」ときは、まずこの網を作ったんですけど、縦のラインを作ってから横のラインを結んでいった。実は、最初は縦構図だったんですよ。そうなると、徐々に縮めていった感じかな。大きいのをさらに小さく「編んで」、またさらに小さく「編んで」。それを均等に行うのではなくて、気持ちが保たなくなったら一部分をがっと描いてみたり、ちょっと違う形を違うところに描いてみたりと、遊びながら、移動しながら作っていきました。
気持ちが保たなくなるというのは、中盤から後半にかけてだと思うんですけど…
いえ、序盤でも、最初に描いた部分がきれいだったりすると、そこを壊すことが怖くなるので、ちょっとスピードは落ちる。乗り超えるのにエネルギーが必要になるので、そのエネルギーを溜めるためにちょっと別の部分—ここは今やりたいと思える部分とか—を描いてみたり。
それを超えるときには、「編む」ことはどうでもよくなったりするんですか。
タッチの入れ方は全部「編む」でやっています。描いていると、地層みたいになってきた部分があったので、地層を「編もう」かなと思って。なんでもなかった部分を地層にして見始めたり。
え、地層の要素が入ったということ?見立てみたいな感じ?「編む」から離れた?
そうじゃなくて、地層を「編んだ」。
河口(以下K)地層を「編む」?
この辺は夜を「編んで」いる。
夜を「編む」?
イメージのある色を、そのイメージに沿って置いていく。夜なら夜の置き方があるし、地層なら地層の置き方がある、という感じ。毛糸にも毛糸の置き方がある。わかるかな…
普通は「編む」ことのできないものを、「編む」という行為をせずに絵画に表現しているじゃないですか。それは普通と違うことだから。言っていることはすごくよくわかるけれど…
でも、夜があって地層があると、その時点でイメージがクロスしている。全く違うもの、縦糸と横糸がクロスしている。
画面の中で、夜を「編んで」いたものと地層を「編んで」いたものがクロスしているということですか?
そう。でも、それは描いているときの感覚だから。ただ絵具としてしか使っていないときもある。すごく勝手なんですよ。
宮本さんなりに、ある部分で何が行われたかというか、こういう手法でやったというのがあるわけですよね。
そうです。ヒョウ柄ぽくなったので、わざとヒョウ柄に寄せていった部分や、編んだ後の編目が徐々に葉っぱのようになったので畑みたいにしたり、とか。こんな感じでやり取りしながら描いています。
それは結果的になった、ということですか。
なったのか、そうしようとしたのか…それはわからない。その瞬間に、感覚で判断しているから。そんなことを言い出すと、いろんな部分にいろんな判断があるんですけど。屋根みたいになったから、藁葺き屋根のようにした部分もある。
それは、「編み物」の体を守りながら?
「編み物」の体は守っている。
屋根を「編んだ」ということ?
ううん、これ(中央上のグレーの部分)は「編んだ」ら屋根になった。
「編み物」ではない部分はあるんですか。
もしかしたら、この辺(中央やや上の緑色の部分)が向こう側になっているかもしれない。
向こう側?
編んでいる面の奥側。編目が大きいんですよ、ここは。
夜を編んでいて、編目がスカスカだから、向こうの色である緑が見えている、ということですか。
うーん、そうかも。向こうの色だと思いながら描いていたのかな。

(7月26日、22:00画廊にて 構成=荒井隆大)

撮影:原田賢幸

宮本ひかり MIYAMOTO Hikari
1984年 熊本県生まれ
2009年 多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
2011年 多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻修了

個展///
2007年「窓から見た月」(鑓水青年美術館/東京・八王子)
2008年「記憶の家」(宮本家3階/熊本・実家)
2012年『「今日の3分クッキングは、季節の野菜を使ったアッサリおひたし。今日は菜っ葉をサッと茹でますよ〜」みたいなノリだよね。サッ、パラッ、どうぞ!』 22:00画廊/小平市, 東京都

主なグループ展///
2006年「pepper's project DrawⅤ」(peppers gallery/東京・銀座)
2006年「蜜会Vol.2」(Gallery ism/東京・吉祥寺)
2007年「ときめき☆鑓水ランデブー(鑓水青年美術館/東京・八王子) 「VIA ART」(シンワアートミュージアム/東京・銀座)
2008年「みつさんvol.3」(SPACE ANNEX/東京・人形町) 「THE SIX' 08」(代官山ヒルサイドテラス/東京・代官山)
2009年「AMUSE ART JAM 2009 in 京都」(京都文化博物館/京都)
2010年「アート&デザインⅡ 国際講評会(北京)」(清華大学美術学院/中国・北京)
2010年「Expected Artists 2010<8+2>」(湘南台画廊/東京・六本木)
2011年「New Artist 2011-笹井青依/宮本ひかり」(Gallery Jin/東京・千代田)
2012年「トーキョーワンダーウォール2012入選作品展」(東京都現代美術館)